To be continued

単純な日記です。

彼と友人

友人と会うたびに、自分が今どのようなものを見て、それから信仰しているのか、どのような派閥にいるのか、それについてどのような考えを持っているのか、について根掘り葉掘り聞いたり話されたりする。正直、もう良い加減にしてくれという気分だ。話を聞いていても、相手がどのようなものに肩入れし、怒りや喜びを感じるのかというのは、いろいろ点在している「政党」によるのではないかという結論になりそうだ。…つまりそれは、彼は自分で見聞きし、自分の感覚を使って真意を得ることを特に喜びはしないが、自分がこれまで培ってきた感情をまず第一に考え、それが為されることを最も喜びとする。それから、その感情というのは家族や友人と彼は切り離しては考えられないタイプの人間のようなのである。僕の言いたいのは、薄情になれということではない。けど彼は、娘の言うことであれば盲目になってでもそれを受け入れ、たとえそれが理解できかねる宗教であっても自分と似ているからと言う理由だけでかれは友人、それから同性の持つ権利を毎日選び続けるのだ。盲目な人間だと思った。そして彼は協会に入らない浮浪者の言うことの汚さについて事細かに話すことがいつも得意である。そういうとき彼が自分の立派な衣服を鏡に写しているのを僕は知っている。彼は差別主義者だ。そして自らの会話の汚さに、浮浪者の生活のつまらなさに唾を吐いた後で、顔を上げて、路上の美しい景色について話し始める。滑稽だと思った。何故その口で芸術を語ろうとするのだろうか。

アウトローな人間もいる。彼とはもうしばらく会っていないけれど、彼はいつも自立した考えを持っているのだと僕は思っていた。それから彼は何故か得体の知れない興味を僕に抱いていて、僕のすること、なすことに対して並々以上の感情を持ち合わせている。ここが厄介で、僕はいつもそれの真意を掴みかねた。友人のいうには、それは取るに足りない嫉妬なのだという。つまり、それは彼と友人の言うことを合わせると、彼が、彼の思っている以上には僕が関心を払わないことが理由らしかったのだが、僕からすると、そんなことはあり得ないと思うのだった。彼はいつも友人達に囲まれていたし、それに仕事でも地位を得ている。知性もある。だから彼のことを、彼以下の人間が貶しているのを見ると(彼の批判は正確すぎる為たびたび人を傷付け、逆恨みに合う)おかしな気分になった。腹が立ったりもした。けれどそれが僕から彼に対してそれ以上執着する理由にはなり得なかった。僕からすると、彼の感情形態が掴みかねるのだった。普通に話している分にはいい。けど謝罪、感謝、譲歩、優しさ、お互いが何かを求めていると上手くいかなくなる。けど僕の方からしても、彼が僕以上に仲の良い友人を連れているのを見て、僕以上に信頼を注ぎ、庇ったりするのを見ていると面白くないと感じた。たしかにそれは嫉妬だった。僕は何度か謝るべきだと言われたけれど、どうしても謝らなかった。僕は彼から言われる筋合いはないと思った。そこには彼にしかない共同体があると思ったし、それに僕だって辛いことをたくさん我慢してきたからだ。僕は嫉妬を感じるとその人にそれ以上近づきたくなくなってしまう。考えてみるとこれまで生きてきた過程で、自分の中にあるそういった、劣情のようなものを他人から、恋以外で解消してもらった経験がないのかもしれない。まあそれはよいんだけど、とにかく彼、僕に時々呼び掛けてはくるけど僕の方からはリアクションしていない。多分どうしようもないと思う。彼は僕の前では、彼以上でいないと落ち着かなくなるみたいだった。僕はそのために必要以上にけなされたり、こきおろされたりするのだけど、それは彼の住んでいる社会のルールだったり、挨拶みたいなものだったりもすることを僕は知っている。けど、そのすべてが今は、億劫になってきている。


いつだったか僕が仲良くなれないと思っていた、綺麗な顔をした男性と今日会った。僕は彼のことを思い違いしていて、すごく女たらしな自惚れやだと思っていたのだ。彼は僕のことを許してないかもしれないと思ったのだけど、彼は何も言わなかった。彼や、彼らが僕を許している理由は、僕に諦めたからではない。たぶん、そんなふうに自分に対して歯向かって来るもの、抗えないものに対して、彼らは初めから何か答えるべきものを自分の中に、たくさん持っていたのだと思った。僕は今日それを見て、それは感情なのだと思った。それは僕が人と相対している時に先生や親なんかが発しようとしていた、答えを自ら奪わないでいることのように思えた。なんとなく、僕は、それが、分け隔てなく身の回りの草や木や関係ない人にもあたりまえに注がれるべき感情のように見えてしかたがなかったのである。僕はその「べき」を「答え」を持ち合わせた彼を見て、少し見当違いだけれどうれしくなった。僕は人が好きになれそうだと思った。