To be continued

単純な日記です。

●小説「姫」

気づけば、毎日兄と過ごさなければならない日が続いていたが、思い返せばこれが昔からずっと続いていた事のようだったと思った。学生の頃も、友人と過ごした後も、旅行の後も、関係がなく、わたしのする事、しなかった事、人物評価や物事に対してそこにいる兄の論理が入り込まないことは無かった、と思った。まわりから見てわたしは他の人と話しているように見えても、それは違い、それはいつも兄と対話しているのでしかなかった。何をしていても、それが振り払えないことを、外の人は訳がわからないというだろうが、わたしには兄が取り憑いているに違いなかった。だから、見ている男も兄の好みで分断されるし、女についても、評価するのは兄だった。わたしはわたしの意見を取り出すために、まずそれを否定することから入らなければならず、それが絶望だった。またそうしたとしても、わたしの決断に対してまたしても兄からの評価が入った。兄は機嫌よく、それが良い世界だと信じていた。わたしは兄のことを好いているも嫌っているもの構わなく、わたしの体力や気分のあるなしにも拘らず、それは毎日毎日毎時間必ずしなければならないのだと思い、わたしは当然、毎日汚いものを背負わされてるのならと死にたくなったが、いつもみたいに、他の論理や人を探そうと思い、あちこちをまわって見た。兄は、自分の仕事について語り、それははじめはわたしを元気付けるような事だったが、次第に退屈になるといつものように悪い癖が始まった。わたしは、兄は色々なことを知っている、と思った。わたしがそう思い始めると、わたしがもっとそう思うように、兄はわたしの前で詭弁を言うようななった。それからいつものように、癖みたいにしてわたしの揚げ足を取るようになった。けどそれは、兄にとってはなんてことのない、楽しいジョーク」なのでしかなく、他人も、そばにいる人も皆が笑った。わたしは、笑わねばならないという空気をみて、ここにいる人は全員が脳みそを持たないバカだと即座に思い憤慨したが、それも意味のないことだった。わたしの絶望も怒りも、兄の前ではジョークとみなされ、いつも意味のないものになった。わたしが唯一そこで気がついたことは、兄はわたしよりも多くのこと、それは10倍や20倍もの事や人との繋がりを持っているが、わたしの関心を引くほどの話はしないということだった。わたしは兄よりも事実として優っていた。だから兄はわたしのまえでわたしのことをこき下ろし、わたしの成績が下にあるように言い、わたしの仕事を自分のもののように見せてぶんどるために、金魚の糞のようにして居座らなければならないんだわ、と思った。わたしはそのことをジョークにして言えば、皆が今以上に喜ぶだろうと思ったが、それをすることもむなしいことに思えた、わたしはもう既に誰にも会いたくないと思っていた。何かをする意欲も、肯定するような感情も、もう毎日が殆どなく、人のことが嫌いになっていた。人と会う時はいいようなことを言うが、本当は逃げ出したかったし、その人のことをもう好きになれないような感じがしている。
貶められて、救い出されるようなことももう何度もあった。見るに見かねて、と言うこともあったろうし、その人の正義が発動するのをわたしも待つ。一方でその一連の、壊れた家と正常なやりとりを見るにつけ、この事にいったい何の意味があるのか、未だ使える椅子や机を兄が気分でばらばらに壊し、それを労力や親切を使ってなおす、その一連の作業に、毎日、それはわたしには鬱のような気分もともなう。たとえば酒や、テストステロンのありあまる兄のようにホルモン剤の力を使えば、何かが見えるのかもしれないが、これはいたいたしいほど生活に付随しているから、人の悪感情すら誘発するのだった。たとえば、不美人だと言われた後で「美人だ」と言われたり、馬鹿だと見なされた後でそんなことはないと言ってもらうことの、それに一体どういう救いがあるのかがよくわからなかった。人がひとをみなす作業に、これ以上は人から出て来る脂のような悪臭から、わたしはもう毎日、反吐が出そうで、ごく一般的な、無知なだけの若ものに対してわたしの方から辞めさせるために、何かをしなければ気が済まなくなっていた、その日は、言ってしまえばここは家畜小屋のようなもので、そこにいる住人へあたる評価も水も餌も、喜ぶようなことも区画された上で投げ込まれてくる。そしてそこにいるのならそれをいちいち享受し、その上がり下がりするものを唯一の自己を救済するものとして結局、家畜同様に受け取るようになると見做されているのでしかなく、それにおいて無関心になれる兄は、たしかに支配する側として天才だったといえる。彼の偉大なる癖は大きな甲高い声で何かが起こっていると知らせる事だったが、それはわたしが突き詰めた事によると反発心や嫉妬や怒りという感情以前の反射、癖、習慣だったと思う。わたしは人は秩序があり節度があるものだと思って生きて来たが、けどこの時になればそれは理想郷の方をわたしが目指して生きてきたというだけで、実際に目にして来たものは家畜や獣の群れでしかなく、人間のような人は数えられるほどしかいなかったことに気付いた。わたしは、未だもって色々な会社を兄に騙されているのかもしれないが、その時はそのことしか思い出せなかった。理想は虚構になり、現実は混沌洞然でしかなく、たしかに人は常に人を羨んで足を引っ張り合い、嫉妬や無理解で誹謗を受け続けて来た時間の方がずっと長い。見栄を張り、大人物だと演出し、自分がしたことが正しいと言い張る。わたしは、世界は狂っているのではなく、狂っている世界がほんものなのだと思った。やっとそう、理解した。秩序があった事などなかったじゃないか。楽しかったのは、たまたまわたしが延々と虚構を見続けたのでしかない。わたしは疲れきっていたがいつも何を失っても驚かないだろうと思っていた。わたしの世界に対して通ずるべき愛も夢も希望も、たった1分程度しかもたず、わたしはすぐさまわたしの身を守るためにその全てを消し去って、忘れさることに慣れていたから、もう手持ちはすっからかんで、果たして、驚くべきほど兄からの盗難によって何も残らない。わたしを救済してくれる人はいたが、それもまともな人もいたが、同時に罠に嵌まる人もたくさんおり、わたしはそれをどうしても迷惑だと思わざるを得なかった。なぜわたしは、わたしのことをモノではなく、人にあたりまえに言葉をかけるときのようにしてもらえなかったのかと思う。それだからわたしはたしかに作り物で、Khimairaでしかなかった。わたしの前で以下ようにするもそれは人の気まぐれでしかないのだから。もし、ひとがそれに抗うとすれば、兄にとっての脅威となる白黒、甲乙、美と醜悪、それは「兄の理解できる範疇のもの」それ以外の物事があることを証明してほしかったが、それは、ごく当然の顔をして居すわるだけの根性を持つ人などあまりいなかった。皆がわたしよりもその兄の存在を認め、おべっかを使い、馬を落ち着かせるように餌をあげ、みずであらい、明日から良い評価をくださるのを待つのが平和を保つ方法だと感じるらしい。そう考えるとわたしがして来たことは兄の論理にはまることなく自分の世界を構築する事でしかない。Khimairaは単一の世界に嵌め込まれることを恐れて生きて来たのである


兄という人間の性、習慣、癖、評価基準…

それは嗜好でも学でもなく、癖で習慣なのでしかない。反吐が出る

他人のする事に注意も払えなければ敬意も持たない。その癖、自分がしたことに関しては始終いい晒し、威張っている


人から多くをせしめる為に身につけた兄のスーツや表情をわたしは見る。

兄にも性欲があり、さして興味もないのに、わたしが自分を誘惑して来たという時点で時間が止まっているらしく、会うたび、それから周りの人を連れて来ては毎回、毎回同じようなことを言う。

わたしはもう既に、子どもの遊戯に対してなど何も感じてもいないが、兄の話がどれだけ大きくなるのかを、観察する様になる。

そのせいでわたしの頭の中は、わたしの性ではなく、兄という男の行動様式でいっぱいに満たされてくる。








「男」はダメだ。




わたしはぜったい、







こいつらを※削除















(おわり)